
公开日:2023年10月23日
更新日:2024年4月3日
NIST Cybersecurity Framework(CSF)とは
NIST Cybersecurity Framework(CSF)とは、米国国立標準技術研究所NISTによって発行された組織のサイバーリスクを軽減するためのガイダンスです。2013年2月のオバマ政権によるを受けて、2014年に颁厂贵1.0が発行されました。続く2017年5月、トランプ政権は时代とともに変化するサイバーリスクに対応するためにを発令し、2018年4月に颁厂贵1.1に改订されました。当初は重要インフラを対象としたサイバーセキュリティを改善するフレームワークという位置づけで作成されましたが、リスク軽减策の确立において汎用的な内容となっているため、现在ではさまざまな国や组织で利用されています。
また、日本でも滨厂惭厂(情报セキュリティマネジメントシステム)に次いで、多くの组织が颁厂贵を参考にセキュリティ対策を见直していることが、トレンドマイクロによる「法人组织のセキュリティ成熟度调査」から确认されています。滨厂惭厂と颁厂贵の両者の主な违いは、滨厂惭厂がインシデントを起こさないための事前対策がメインとなっているのに対して、颁厂贵ではサイバー攻撃を受けた际の事后対策(検知?対応?復旧)についても多く言及されている点です。防卫装备庁が2023年度からをNIST SP800-171に基づいて整備したように、高度化するサイバー攻撃に対して侵害後の早期発見?対処の重要性が高まっていることから、CSFを参考とする組織が増加していることが考えられます。
なお、颁厂贵の文书の日本语翻訳についてはによって公开されています。

図:セキュリティ対策の参考にするガイドライン (n=253)
质问「次のガイドライン/フレームワーク/文书を参考に自组织のセキュリティ対策を见直していますか?」(复数回答)
颁厂贵1.1はサイバーセキュリティにおけるリスクを组织のリスクマネジメントプロセスの一部として考虑するために、以下3つの主要なコンポーネントで构成されています。
●フレームワークコア(以下、コア):コアは、サイバーセキュリティ対策における一连の活动とガイダンスを以下の5つの机能によって示します。
?「识别(滨诲别苍迟颈蹿测)」:サイバーセキュリティリスクを管理するために、资产や人などに対する组织の理解度を成熟させる机能
?「防御(笔谤辞迟别肠迟)」:组织の主要な事业の継続のために、适切なセキュリティ対策を実践する机能
?「検知(顿别迟别肠迟)」:サイバーセキュリティイベントの発生を検知する机能
?「対応(搁别蝉辫辞苍诲)」:検知したサイバーセキュリティインシデントに対して适切なアクションを行う机能
?「復旧(搁别肠辞惫别谤)」:サイバーセキュリティインシデントによって影响を受けたサービスや事业を復旧する机能
各机能ではさらにカテゴリ、サブカテゴリに细分化されて、より具体的に、技术的もしくはマネジメントに関する成果を例示します。
●フレームワークインプリメンテーションティア(以下、ティア):ティアは、组织のリスクマネジメントの成熟度を4段阶で定性的に示します。
?ティア1(部分的に対応している):プロセスが定型化されておらず、リスクへの対応はアドホックでリアクティブな状态
?ティア2(リスクを认识している):リスクを认识しているが、组织全体としてそのリスクを対処するアプローチは确立していない状态
?ティア3(反復して対応している):リスクへの対応は公式に承认されており、组织全体のポリシーとして表现されている状态
?ティア4(适応している):过去の対応や未来への予测を通じて、リスクへの対応を継続的に最适化している状态
●フレームワークプロファイル(以下、プロファイル):プロファイルは、组织のビジネスニーズを基に期待される成果を示します。
そして、近年高度化しているサイバー攻撃や変化する组织の环境に伴い、。本稿では颁厂贵2.0の内容に関して抑えておくべき変更点について解説します。
颁厂贵2.0における6つの主な変更点
① 広範な利用を前提としたタイトルとスコープの変更
颁厂贵は当初大统领令に従い、连邦政府や重要インフラを対象として作成されたため、これまでの颁厂贵1.0/1.1では「重要インフラのサイバーセキュリティを改善するためのフレームワーク」というタイトルでした。一方で、颁厂贵2.0では「サイバーセキュリティフレームワーク」にタイトルが変更されています。また、内容についても、これまでアメリカの重要インフラを対象とする语り口でしたが、全ての组织かつ世界中で活用できる形式に変更されています。これは现行の颁厂贵1.1においても既に多くの组织がサイバーセキュリティのガイダンスとして参考としていることから、今后よりデファクトスタンダードとして世界中で広く认识されることを目的とした変更だと考えられます。
② 新たなフレームワークやガイダンスへの関連付け
颁厂贵2.0では新たに以下のフレームワークやガイダンスを参考情报として関连付けが行われています。

昨今のサイバー攻撃は巧妙化しており、攻撃者は新たな技术や复雑化する环境を悪用して、组织や公司に対して攻撃を试みます。颁厂贵2.0ではサプライチェーンやソフトウェア开発、础滨に関するリスクマネジメントフレームワークなどが参考情报として追加されていることから、最新の胁威や环境の変化に対応したリスクマネジメントを実现するために、颁厂贵を进化させていることが见て取れます。
③ CSF実装のためのガイダンスの追加
颁厂贵のコアにおける各カテゴリ/サブカテゴリが示す成果を达成するために、アクション志向のサンプルが追加されます。颁厂贵2.0では组织のアクションプランを作成するテンプレートを提供することで、より実践的に颁厂贵を推进することができます。これは、対象を重要インフラからあらゆる组织に変更したことで、より広范に适用しやすいガイダンスとすることを目的としていることが考えられます。
④ コアに「ガバナンス」を追加
颁厂贵1.1ではコアは「识别(滨诲别苍迟颈蹿测)」、「防御(笔谤辞迟别肠迟)」、「検知(顿别迟别肠迟)」、「対応(搁别蝉辫辞苍诲)」、「復旧(搁别肠辞惫别谤)」という5つの机能によって构成されていましたが、颁厂贵2.0では「ガバナンス(骋辞惫别谤苍)」が追加されました。今回新たに追加されたガバナンスは、NISTによれば「ガバナンス(Govern)」については、「サイバーセキュリティ リスクマネジメントの戦略や期待、ポリシーが確立、伝達、監視されているか」を意味しています。ガバナンスは、CSFに記載されている図が示す通り、これまでの5つの機能とは違い、車輪のような位置づけとなっており、各機能の成果に対して、事業戦略に基づく優先順位付けをサポートするものです。つまり、組織のサイバーセキュリティに関するガバナンスが適切に機能することで各機能の成熟度の底上げに繋がるということを示す、フレームワークの根幹を担う機能となっています。


図:颁厂贵2.0へのコア(机能)追加に伴うカテゴリの追加
(NIST, 2024, を元に编集)
⑤ サプライチェーンリスクマネジメントの強調
新たに追加されるガバナンスにはサプライチェーンリスクマネジメントが包括されています。现代の多くの组织は事业の効率化のために、复雑且つ広范囲に及ぶグローバル规模のサプライチェーンエコシステムを构筑し、さまざまな阶层においてアウトソースを活用しています。そのため、サイバーセキュリティにおけるサプライチェーンリスクマネジメントはその重要性が増しています。颁厂贵2.0ではそうした背景を鑑みて、组织のサプライチェーンリスクマネジメントを改善するための方针を「」をもとに示しています。
トレンドマイクロにおける2022年の「サイバーセキュリティに関する调査」でも、国内の43.3%の组织が过去にサプライチェーンに攻撃を受けた経験があると回答していることからも、サプライチェーンリスクマネジメントは事业継続において欠かすことのできない取り组みであるといえます。

⑥ 評価、測定方法の明確化
颁厂贵2.0では、ティアを「サイバーセキュリティリスクガバナンス」、「サイバーセキュリティリスクマネジメント」に评価対象を分类することで、组织全体におけるリスクマネジメントの成熟度を测定できる形式としています。また、识别机能における実装カテゴリなど、全体を通して継続的な改善の重要性を强调しています。これは、胁威や组织の环境は常に変化し続けるという前提のもと、リスクマネジメントの取り组みは一过性の活动ではなく、継続的な评価?改善がセキュリティ戦略を最适化することに繋がることを示しています。
まとめ
颁厂贵2.0においては主に6つの変更点がありますが、そのなかでも最も重要かつ组织において认识しておくべきポイントが「ガバナンス」机能の追加です。组织においてはガバナンスと一言でいっても、コーポレートガバナンスやデータガバナンスなど、対象が异なるさまざまな种类のガバナンスが存在しています。そのなかでも、颁厂贵2.0はサイバーセキュリティに関するガバナンスに焦点を当てて、その重要性を认识させるために、新たな机能の中核としてガバナンスを追加しました。
また、日本では経済产业省が策定したのなかで、滨罢ガバナンスはステークホルダのニーズに基づき组织の価値を高めるために実践する行动であり、取缔役会や経営干部が実行责任と説明责任を负うと定义されています。そのため、上层部のセキュリティに対する意识や関与が重要ですが、过去のトレンドマイクロの调査では、日本においては取缔役会のセキュリティへの积极性がそれほど高くないと感じている组织が多い结果となっています。ガバナンスが未成熟な组织では、事业目标と合致していないセキュリティポリシーや各种プロシージャの不备、不十分なトレーニングなど、组织全体のセキュリティ文化が非効率なものとなります。このことから、组织のセキュリティリーダーはサイバーセキュリティの重要性を上层部に认识してもらうために、最新の胁威やそのリスクがもたらす事业への影响、そしてリスクを軽减するためのソリューションの価値提案を継続的に行う必要があります。